櫛形山登山道パトロール

アヤメの写真

 南アルプスガイドクラブでは、南アルプス市から業務委託を受けて7月~10月の間、毎週1回櫛形山のパトロールをしています。

 丸山尾根・北尾根・中尾根・南尾根の各登山道、池の茶屋登山道を順番に回り登山道整備や植物の開花状況などを調べています。

 

 「櫛形山は亜高山植物の宝庫で、見る者の目を楽しませてくれ、裸山やアヤメ平では、一帯が青紫に染まるほどアヤメが密度濃く咲き乱れる。」

 

 これは、平成19年に発行された櫛形山の本の中の一節です。自生のアヤメの群生地としては、東洋一の規模だった・・・らしい。

アヤメ平の草花

 この写真は、今年の8月23日のアヤメ平の写真です。

 トモエシオガマ、イワオトギリ、シモユケソウ、キオン、ヤマハハコ、ソバナ、レンゲショウマ、マツムシソウ、ツリガネニンジン、タマラソウ、マルバタケブキ、トリカブトなどが見られました。

鹿柵の外の写真

 これは上の写真の地点から50m程離れた所です。サルオガセが付いたコメツガの木が無かったら、芝が整備されたゴルフ場みたいです。

 

 

 実は、鹿柵の中と外なのです。

鹿柵の中の写真

 鹿柵の中

鹿柵の外の写真

 鹿柵の外

 

 

 見事に草が鹿に食べられています。春夏秋冬多種多様な草花に満ちた櫛形山は今は有りません。今の櫛形山はアヤメ平・裸山の鹿柵の中の小さな中で、かろうじて貴重な生態系を維持しているのです。

 山梨県は、全国に先駆け高山植物の保護条例を作り山岳連盟などがレンジャー活動をしてきましたが、それは盗掘などから高山植物を守る為でした。鹿の食害は当時としては、想定外だったと思います。

 今鹿の食害どこの山でも起きています。その為残っている植物は、トリカブト・マルバタケブキ・バイケイソウ・マムシグサ・ハシリドコロなど毒のある植物です。どこの山での同じ様な植物しか見られなくなっています。

 この櫛形山、その後ろにそびえる南アルプス、鳳凰三山・白根三山も例外では有りません。仙丈が岳のカールでも鹿の姿が確認されています。

 当然ながら、農作物被害、植林を含めた山林の被害(樹木の皮をはぎ取って食べるため、枯れてしまう。樹木が枯れて、表土が無くなった山は保水力が無くなります。大規模な表土の流出の原因ととなります)また、ヤマビルやダニの増加・生息地域の拡大などが起こっています。

 増えすぎた鹿は、もうバンビとかつぶらな瞳で可愛いなど、シャレになりません。

 鹿がふえたのは、温暖化のため鹿の生息する標高が上がった、温暖化のため雪が少なくなり越冬しやすくなった(鹿はカモシカとは違いラッセルが得意ではありません。お腹が付くくらい雪があると行動が出来なくなるそうです)、天敵のオオカミがいなくなった、など説は色々あります。

 しかし人間の活動が鹿の生息環境に影響を及ぼしたことも、忘れてはならないと思います。それについては、また考えてみたいと思います。